どうすればミッドサマーは「上田と山田のいないTRICK」になりうるのか【ネタバレ有感想】

ミッドサマー 映画
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ミッドサマー

まずね、ミッドサマーを上田と山田のいないTRICKだと言ったやつちょっと来なさい。

ことの始まりはミッドサマーが上映された2020年冬。
Twitter界でミッドサマーを「上田と山田のいない海外版TRICK」と評価した人が現れ、
それがバズりネット記事に取り上げられるほどの情報が拡散されました。

私は「美しい舞台で行われるホラー」というギャップと上記の「上田と山田のいない海外版TRICK」という煽り文句?が気になり、いつかみてみようと思ったのが一昨年のこと。
amazonのプライムビデオでミッドサマーが字幕版、吹替版ともに無料になったのであえて事前知識0でTRICK好きの両親を誘ってミッドサマー上映会をしました。

おかげさまで村娘との合⭐️体シーンを親子3人で見ることになりました。
気まずすぎて気まずすぎて途中から右に座っている両親を見られませんでした…。

何をもってして 「上田と山田のいない海外版TRICK」 だと言い出したのか。

この記事は気まずすぎる3時間弱を味わった恨み、TORICKという言葉に踊らされた悲しみを込めた「全然TRICKに似ても似つかない」映画ミッドサマー感想になります。

ミッドサマーあらすじ

家族を不慮の事故で失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人と共にスウェーデンの奥地で開かれる”90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった。

ミッドサマー公式ホームページより引用

TRICKとは?

ここでTRICKを知らない方にTRICKがどういうものなのか補足説明をば。

TRICK画像
公式ホームページより引用


TRICKとは
主人公は(自称)天才マジシャン山田奈緒子と天才物理学者上田次郎(ただし性格に難あり)。
この珍コンビが、霊能力者や胡散臭い宗教関係団体たちが引き起こす殺人事件のトリックをあばきだします。ミステリードラマ(なんだけどなんかしっくりこない)。

TRICKの魅力は多すぎて言葉では語りつくせません。見たほうが絶対良いです。
ドラマ内に散りばめられた怒涛のネタの数、ヘンテコな効果音、俳優が全力で演じるどこにもない方言。そのギャグの中に突如ぶちまけられるシリアスな展開。宗教や風習という中にに隠された悲劇。
ギャグとシリアスが渾然一体となって視聴者に襲い掛かり心を鷲掴みにすること間違いなしです。
マジでおすすめなのでみてください。
シリーズはドラマ、映画、新作スペシャルなど結構幅広くやっております。気軽にみられる映画から見始めるのもおすすめですが、時系列順に追っていったほうがネタを理解しやすくなっております。
骨の髄までTRICKを楽しみたい方はぜひ時系列順にみることをオススメします。

たまにAmazonprimeで映画がタダで見られたりするのでちょくちょく検索してみるのもありです。

時系列順に紹介しているサイトがあったので気になった方は下のURLからどうぞ。

「トリック(TRICK)」シリーズを観る順番は時系列が良い?あらすじやネタバレ考察も解説 | ciatr[シアター]
本格的な謎解きと、少しゆるめのコミカルテイストが融合した独特な世界観が反響を呼び、国民的人気を獲得した「トリック」シリーズ。作品数が多い上に時系列が少しわかりにくく、初めての人は観る順番に困ってしまう

ミッドサマーの感想

もう、何をもってして「山田と上田が出てこないTRICK」と言ったのか。
私、切に、気になります。

ぐだぐだ書いているとどこまでも愚痴が長く続くので肝心なポイントに絞って感想を書きたいと思います。

①物語には直接関係ないダニーの家族の死
物語はダニー以外の一家が死んでしまうところから始まります。
TRICK脳な私「お、ダニー以外の家族全員が死んだのはおそらく舞台になる村が関係しており、主人公たちは家族の死んだ原因を探すために村に行くことになるんやろうな」
→普通に村とは関係なく死にました。
初っ端から予想を裏切られ、「ま、まあTRICKって最終的に謎が解かれるのが醍醐味だし、これホラー映画だし勝手が違うのは当たり前だし!」と自分を鼓舞しながら映画を見続けました。
けどまあ、裏切られたよね。

②雑なタペストリーという伏線
村に到着した後登場する主張強めのちょいグロタペストリー。
どう見てもあやし〜い雰囲気丸出しの図柄でいかにもこれ、これからのストーリーに関係ありますよ感丸出し。しかもなんか描かれている内容が下品。
なんかこうあからさまに伏線ですよーと主張されるとなんか、こう…萎えるというか…。
TRICK脳な私「謎を突き詰めているうちにふと見つけたりするのが面白いんじゃないの?」
という考えがしょっちゅう頭をよぎり、段々真実に気が付き始めます。
もしやこれ全然TRICK要素ないんじゃないの??

③なんか死んでいく人たち。
ちゃんと死んだ理由づけがわからないままなんか死んでいく人たち。
いや、別にホラー映画だから人が死ぬのは当たり前だし、いちいち理由づけて人が死ぬ必要はないとは思います。パニック系ホラー映画だってなんかよくわからないうちにバタバタ人が死にますし。最終的には村のなんかよくわからない儀式のために必要な死だということもわかるんです。
わかるんですが、
TRICK脳な私「きっと村で死んでいく人たちは村で何かの儀式に関係があって死んでいき、その儀式の理由をダニーたちが解き明かしていくんだろうなぁ」
と思いながら観ていたもんですからなんか死んでいく人たちに違和感を覚えました。
別にダニーもいつの間にか友達が消えていくから死んでるもんだと思ってないし、そのことによって焦るわけでもないし。
特に鶏小屋で肺を剥き出しにしていた人なんかマジで誰??状態でしたけど、その段階になるともはや誰が死んでいようがどうでもいい心境になっていました。

これらの感想は全て「上田と山田のいない海外版TRICK」という言葉に取り憑かれていた私が悪いのです。この言葉のおかげで本来もっと素直に楽しめるシーンも「こんなんTRICKじゃないやい」という呪いがかかって歪んでしまったのがいけないのです。

でもTRICK脳に憑りつかれた脳みそ以外でも
あまりにも尺をとりすぎている序盤シーンとか村娘と彼氏の合体シーンとかいろいろ擁護できないシーンは多かった気がするなぁ…。
彼氏との心のすれ違いや家族に置いて行かれたシーンを説明したいのはわかる。わかるけどとっとと噂の村に行けや

どうすればミッドサマーは上田と山田のいないTRICKになれるのか

こんなにも共通点がない作品をどうしてTRICKだのと言ったのか。
あまりにもかけ離れすぎてて記事を書いてて怒りが再燃してきましたが、ここで頭の中のジョースター卿が告げました。
「逆に考えるんだ。似ていないのなら、似せる展開を考えればいいんだ…」と。
そこで以下が私の考えた上田と山田のいないミッドサマーです。

・OPで史実のナレーションをさせる
TRICKのOPといえば、森山周一郎氏の渋〜くて良いお声のナレーションと味のある紙芝居。
18世紀とか19世紀あたりに実際に起こったマジシャンや霊能力者の超常現象エピソードが紹介される紙芝居。あの実際のドラマに関係するようなしないようなあのよくわからん導入が「あ~TRICK始まったなぁ」感を出すのです。
よってミッドサマーでは映画の始まりにタペストリーが登場したのでその説明を渋いお声の方に軽くさせましょう。
ちょこちょこでてくるルーン文字について説明するのもありだと思いますよ。

・怪しい方言を話す村への案内人を登場させる
どこのお国ことばですかと聞きたくなるような方言をくり出し、上田に助けを求めにくる依頼人や村人。大抵事件に一枚噛んでいるくせものが多く、一番最初に強烈なお国ことばを話すのもこの依頼人です。
ミッドサマーでは村に招待したベレがその案内人に当たるのでベレにめちゃくちゃな方言を話してもらいましょう。
イケメンから繰り出される強烈な方言。一定の需要はありそうですね。(適当)

・乗ってきた車のドアを外れさせる
山田と上田は依頼主が指定した村に必ず上田カー(トヨタ パプリカ)というよく言ってビンテージの車、悪くいってオンボロの車に乗って村を訪れます。
その時必ず車から降りた際に車のドアが外れるのがTRICKの様式美になっています。
今作ミッドサマーでもダニーらは車に乗って村に向かっているのでちょうどいいですね。
降りた瞬間ドアを悉く外しましょう。場の空気が和み、いいオチになります。

・村長に村特有のギャグをやらせる
変な村には変な村長がつきもの。村のトップだということで村長は村の中でも一番に変でなくてはなりません。
ミッドサマーの村長は見た目が聖職者のような潔白さなのでここはギャップを狙って大きな身振り、壮絶な変顔、センスが爆発している親父ギャグぐらいはかましてもらいたいものです。
村長がやっているギャグ(という名の村の風習)を村民がやらないというのも不自然なので、村民もやれば統一感が生まれ、尚よくなるでしょう。

・初日の歓迎会で最高潮に盛り上がっているときに村の預言者を登場させる
TRICkでいえば大抵は白髪で変な衣装を着たおばあさんですね。
よく「祟りがおとずれる」とか「村に伝わる童歌が今日のこの不吉なことを表している」などといった言葉を祭りの最高潮の時に言ったり、村に訪れたときばかりのタイミングに言ったりと、全く空気を読まない発言で雰囲気をぶち壊します。
ミッドサマーでは意味ありげに予言書を書くことができるという少女?がちらっと出てきたのでこの子を最大限に活躍させましょう。
登場する際に村の予言書を持たせて「この予言書に書かれている通り〜」とか「客人が誰一人としてこの村から出て行くことはない」とか言わせておけば効果は抜群です。
その予言書をみたジョシュが予言書に興味を持ち、どうしても読みたくなる動機付けにもなって一石二鳥です。
あとは人が一人いなくなるたびにアビーたちの前に現れ変な笑い声をさせて去らせておけばそれで完成です。
まじで本編でのあの子はなんだったんだ。

・クリスチャンの裸シーンに白いちりちりを発生させて大事な部分を隠す
我らが矢部警部は頭皮が大変デリケートな方であり、不毛な大地に髪を芽吹かせるためによく毛生え効果がある温泉に浸かりに行くシーンが多いです。
お風呂に入るときは当然身体は生まれたままの姿になるため、当然矢部警部の頭も生まれたままの姿になることが多いです。
その時見えてはいけない不毛な大地を隠すときに用いられるのが白いちりちり。
言葉で説明するのは難しいですが、多分TRICKを見ていただければ一発でわかると思います。
本当に効果音もちりちりという音がします。
ミッドサマーはR18の作品ということでグロにもエロにもガッツリリアリティを持たせてきます。
特にクリスチャンと村娘との合体シーンは「俺たちは何を見せられているんだ…」感が強く、ともすればギャグにも見ることができるので(主に周りで全裸で喘いでいるおばさん集団のせいで)、ここは思い切ってギャグのシーンにしてしまいましょう。
クリスチャンの尻あたりを全て白いちりちりで隠せばなおさら「俺たちは何をry」感がまし、よりTRICKらしさが出るんじゃないでしょうか?
クリスチャンが全裸で村を走るシーンにも当然ちりちりを発生させます。
股間を隠すちりちりが風に飛ばされそうになる、そんなシーンを作成すればよりいっそうTRICKらしさが増すことでしょう。

・隙あらばルーン文字を入れていく
TRICKといえばネタの細やかさが売りの一つ。
あちこちの壁に制作者側のメッセージやネタを差し込み、一時停止をしなければ全てのネタを追えないほどです。
特に山田里美先生の習字教室の「何度目だナウシカ」のネタは忘れようにも忘れられません。
ミッドサマーにおいてはルーン文字が大事な部分を占めているようなので、食事のテーブルが実はルーン文字だった、というものではなくもっと大々的にルーン文字をプッシュしていきます。
主に撮影シーンは野原なので咲いている花がルーン文字だった、というようにし視聴者に視覚的にルーン文字を訴えていきましょう。
でもルーン文字だと一部の知識があるか確か何を示しているのかわからないので、英語にしてネタを仕込んでいくのも一つの手です。
伝わらないネタなど作者の自己満足でしかないですからね。

・最後にダニーにどうして祭りが行われるようになったか推理してもらう
最後に生き残ったダニーには
・消えていった友人がなぜ、どのように死んでいったのか
・この祭りはどのようにして始まったのか
・祭りの終わりには何があるのか
をみんなの前で推理してもらいます。
推理をし終わったあとはダニーがどのような選択をしようが自由なので本来のミッドサマーのエンドに向かえば万事解決です。
一通りTRICKらしさに近づけることと思います。

ここまでやるとミッドサマーの良さや持ち味がぶち壊しでとんでもない駄作の映画になること間違いなし。ですが、どうしてもミッドサマーをTRICKに近づけるためにはこうまでしないとどうにもなりません。 
つまりは、ミッドサマーはどう足掻いても上田と山田のいないTRICKにはなり得ないということです。
つまりこんなに長々と話して何が言いたいかというとですね。
二度と、ミッドサマーを、上田と山田のいないTRICKだと、いうんじゃ、ないぞ。

蛇足

日本科学技術大学教授上田次郎が出版した名著書「どんとこい超常現象」。
TRICKのドラマ内で上田次郎が何回も誇らしげに紹介してくる本が、なんとこの現実世界でも出版されています。しかも第二弾も。
ネタに全振りなTRICKですが、まさか本まで出版するとは思っていませんでした。
本の内容はTRICKをみていないとサッパリわからない代物です。
TRICKを見たことがない方も、現実世界に本を出版するほどネタに全力な制作陣の本気を感じ取ってください。そしてドラマか映画を見てください。
絶対に後悔はしません。

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